関門トンネル
関門海峡の海底トンネルを歩いていると思うとドキドキします。
「関門トンネル」は、本州側(山口県下関市と九州側(福岡県北九州市)を繋ぐ海底トンネルです。山陽本線(在来線)用の関門鉄道トンネル、道路(国道2号)用の関門国道トンネル、山陽新幹線用の新関門トンネルの3本の関門トンネルが関門海峡の海底下を貫通しています。関門国道トンネルには、歩行者用の関門トンネル人道が併設されています。
本州と九州を繋ぐ最初の関門トンネルは、1942年に開通した関門鉄道トンネルです。世界初の海底トンネルです。工事は1936年に着工され戦時下の1942年に下り線が、上り線は1940年に着工して同じく戦時中の1944年に開通しました。トンネルの全長は上り線 3604m、下り線3614mで、海底部の長さは上下線とも1140mです。トンネルの取付勾配は下り線が20‰、上り線が22‰、最大25‰となっています。工事のしやすさや事故への備えから上下線が別々につくられました。関門鉄道トンネルができるまでの関門海峡は、関門連絡船による貨車航送が行われていましたが、積替の手間を省き輸送力を強化するため、渡船の増強案、橋梁案、トンネル案が検討されました。しかし、関門海峡を通航する船舶は多く、潮の流れが強いため、これ以上の船の増便は難しいこと。トンネルは橋よりも建設費が安く、爆撃を受ける可能性も低いことなどにより、国防の観点からトンネル案が採用されました。
関門鉄道トンネルは、関門海峡の「大瀬戸」と呼ばれる海域を通っています。関門国道トンネル、新関門トンネル、高速道路の関門橋は、関門海峡の最峡部(約600m)の「早鞆の瀬戸」と呼ばれる海域を通っています。早鞆の瀬戸は水深が深く、機関車が列車をけん引する性能を勘案して、トンネルが急勾配にならないように関門鉄道トンネルは大瀬戸ルートが採用されました。また、関門鉄道トンネルは、地形的な面から旧門司駅(現 門司港駅)に接続することができず、大里駅に接続することになったため、旧門司駅は門司港駅と改称され、大里駅は九州の玄関口として門司駅に改称されました。
関門鉄道トンネルの開通時(1942年)、山陽本線の幡生駅から門司駅間で直流電化されて、この区間にEF10形電気機関車が導入されました。1961年、鹿児島本線の門司港駅から久留米駅の間が交流電化されると、門司駅構内で交直切り替え区間(デッドセクション)が設けられることになりました。当初、関門鉄道トンネル内も交流電化に変更することが検討されましたが、漏水による漏電等などが懸念されたため、直流のままとなり、これに合わせて導入された電気機関車がEF30形でした。EF30形は、塩害対策のためにステンレス製の車体を採用し、また、直流と交流の両方の電源に対応した交直流電気機関車として世界初の量産された車両でした。EF30形は、試作車1両と量産車21両の計22両が製造され、関門トンネル専用車両として活躍しましたが、後継のEF81形300番台や400番台の導入によって1987年までに全車両が引退しています。EF30形の保存車は、和布刈公園の関門海峡めかり駅前に静態保存として1両(EF30 01)、九州鉄道記念館に動態保存として1両(EF30 03)の前頭部が展示されています。
関門鉄道トンネルは、塩分を含む地下水が1日600トンも染み出してきます。塩水でレールや電気設備が地上より早く傷むため、ほぼ毎日3時間程度、上下線どちらか一方の鉄道運行を中止して、作業員がレールや電気系の補修、点検を行っています。
JR門司駅の5番、6番のりばには、関門鉄道トンネル内部の下り線の写真と、関門鉄道トンネルの概要、歴史、工事、走行した列車などを紹介した案内板が設置されています。
関門国道トンネルは、1937年に試掘導坑の掘削が開始されました。しかし、第二次世界大戦による資材不足と戦災で1945年に工事が中断しました。その後、1952年に工事を再開し、1958に開通しました。全長3,461mの内、海底部分は780m。トンネル内は片側1車線の2車線道路(国道2号)です。トンネル断面の上3分の2程度が車道、下3分の1程度が人道の2層構造になっています。車道の幅が7.5m、人道が4mです。前後のアプローチ部は車道のみの構造となっています。
関門国道トンネルに併設する関門トンネル人道の全長は780mです。車道の直下に位置する関係上、人道も国道2号に指定されています。人道の入口にはエレベータが設置されていて、下関側では地下約55m、門司側では地下約60mまで降りて通行します。歩行者・自転車・50 cc以下の原動機付自転車が利用できますが、歩行者専用道路に準じた扱いになっているので、トンネル内は右側通行で、自転車・原動機付自転車はエンジンをかけない手押しでの通行となります。通行料は歩行者無料、自転車・原動機付自転車は20円。通行時間は6時から22時まで。人道トンネルの中間地点には山口県と福岡県の県境線標があります。徒歩約15分で関門海峡の海底を通り抜けることができます。
関門トンネル人道(下関側)入口は、国道9号を挟んで、みもすそ川公園(壇ノ浦古戦場址)の向かいにあります。併設する関門プラザは、西日本高速道路が運営する関門トンネル資料館があります。
関門トンネル人道(門司側)入口は、和布刈公園内にあります。近くには、和布刈(めかり)神事で有名な和布刈神社が鎮座しています。また、和布刈公園には、観光トロッコ列車「レトロライン」の関門海峡めかり駅があって、和布刈公園と門司港レトロ地区の間を2.1km、10分で結んでいます。
新関門トンネルは、JR西日本山陽新幹線の新下関駅と小倉駅の間にある全長 18713m、海底部分は880mの鉄道海底トンネルです。新幹線の博多駅までの開通に伴い、1975年に完成しました。
建設当時の山陽新幹線の最高速度は200km/hでしたが、260km/h運転を見越して高速運転に対応するために、新幹線のトンネルの最急勾配は15‰以下、最小曲線半径は4000mと定められていました。完成した新関門トンネルの全長は18713m、取付勾配は特例で18‰、最小曲線半径は3500mになりました。新関門トンネルは、関門鉄道トンネルに比べて海底トンネル部分が短いですが、トンネルの全長は新関門トンネルの方が5倍長くなっています。
ちなみに、勾配15‰以下とは、水平方向に1000m進む場合、垂直方向へ上がる高さが15m以下という意味です。最小曲線半径とは、安全性と快適性を保証する最小の値のことです。鉄道線路のカーブをそのまま延長すると円になりますが、この円の半径が曲線半径です。曲線半径の値が小さいほど急カーブになります。
関門トンネル人道(門司側)までのアクセス
羽田空港(東京)から北九州空港まで約1時間50分。北九州空港からJR小倉駅まで西鉄バスで約35分。
JR新大阪駅からJR小倉駅まで新幹線で約2時間20分。
JR小倉駅からJR門司港駅まで鹿児島本線(門司港駅行き)で約15分、JR門司港駅下車。JR門司港駅から徒歩25分。
あるいはJR門司港駅で北九州銀行レトロ線九州鉄道記念館駅に乗り換えノーフォーク広場駅下車、または西鉄バス(和布刈行き)で関門トンネル人道口バス停下車、徒歩すぐ。
関門トンネル人道(下関側)までのアクセス
羽田空港(東京)から山口宇部空港まで約1時間20分。山口宇部空港からJR下関駅まで予約制空港シャトルバスで約1時間15分。JR下関駅から徒歩20分。
または、JR下関駅からサンデン交通バス(長府駅行き)に乗り、関門トンネル人道口バス停で下車、徒歩すぐ。
JR新大阪駅からJR新下関駅まで新幹線で約1時間10分。
JR新下関駅からJR下関駅まで山陽本線(下関駅行き)で約10分、JR下関駅で下車。JR下関駅から徒歩20分。
または、JR下関駅からサンデン交通バス(長府駅行き)に乗り、関門トンネル人道口バス停で下車、徒歩すぐ。
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