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合掌造插圖

世界遺産「白川郷・五箇山合掌造り集落」に行く前に知っておくとさらに満喫できる合掌造りの基礎知識

2022/01/31

 

庄川の中流域、岐阜県富山県の県境に、白川郷岐阜県白川村、高山市の一部)と五箇山富山県南砺市の一部)と呼ばれる地域があります。

世界遺産 合掌造り 岐阜県富山県エリア図

白川郷五箇山の地域には、「合掌造り」と呼ばれる独特な形状した築100年から400年ほどの茅葺民家が残っています。白川五箇山以外の地域では合掌造りの茅葺民家はありません。岐阜県白川郷の荻町(おぎまち)集落、富山県五箇山の相倉(あいのくら)集落、同じく五箇山の菅沼(すがぬま)集落の三集落は、1995年に「白川郷五箇山の合掌造り集落」としてユネスコの世界遺産に登録されました。

合掌造りの名前の由来(合掌している僧侶のイラスト)

合掌造りは、屋根の勾配が仏様を拝むときに両手を合わせた腕の形(=合掌/仏教用語)に似ていることから名付けられました。

合掌造りの「ウスバリ(叉首台、薄梁)構造」のイラスト図

合掌造りの家屋は「ウスバリ(叉首台、薄梁)」と呼ばれる構造になっているのが特徴です。ウスバリは合掌を構成する三角形の底辺に位置する梁のことで、人が生活する四角形の部分(=軸組)と屋根を支える三角形の部分(=小屋組)が、ウスバリで構造的にも空間的にも分離されている建物です。軸組部分は大工さんが作り、小屋組部分は集落の共同作業*として村人たちが作ります。

*白川郷では、集落の共同作業を「結(ゆい)」と呼んでいます。

合掌造りの「叉組構造」のイラスト図

また、小屋組では、二本の丸太を屋根の最上部(大棟)で交差させて、梁の両端に差し込んだ「叉首(さす)」と呼ばれるトラス構造になっているのも特徴です。

合掌造りの屋根裏(アマ)のイラスト

合掌造りの家屋は基本的には平屋建てで、二階以上に見える部分は屋根裏*です。合掌造りの屋根組みは、釘を使わず、木材を縄で結合させて支える構造になっているのも特徴です。雪の重さに対して柔軟性が生まれ、家屋の耐久性が増すように工夫されています。

*飛騨地方・北陸地方では、屋根裏を「天(アマ)」と呼んでいます。

日本の茅葺屋根の種類(寄棟、入母屋、切妻) 概略図

茅葺は、ススキやヨシなどのイネ科の多年草で覆った屋根のことで、日本では、弥生時代(2500年前から1700年前)の竪穴式住居にも見られる屋根の葺き方です。茅葺屋根は、世界各地で最も原初的な屋根とされているので、茅葺そのものは日本独特のものではありませんが、日本の茅葺屋根の形状は「寄棟屋根」か「入母屋屋根」が一般的です。

合掌造りの断面図

合掌造りも茅葺屋根ですが、「切妻屋根」が主流です。この形状は養蚕が大きく関わっていて、江戸時代(17世紀)になって養蚕が盛んに行われるようになると、屋根を急勾配にすることで、屋根裏(アマ)を2層から4層の空間に分けることができるようになり、蚕の飼育場や作業スペースを確保することができました。養蚕業の発展にあわせて、多層化、大型化になっていったと考えられています。また、合掌造りの屋根の勾配は概ね45度から60度まであって、後代に建てられた合掌造りほど、屋根が急勾配な傾向があります。白川郷五箇山は日本でも有数の豪雪地帯で、急勾配な屋根の上には雪が積もり難く、雪の重量による倒壊の危険が小さいという利点も併せ持っています。

ちなみに、白川村や五箇山の合掌造りは「切妻屋根」が多く、同じ白川郷でも旧荘川村(現・高山市)の合掌造りは「入母屋屋根」が多く見られます。

合掌造り 「妻入り」「平入り」 比較図

日本家屋において、基本的に建物の長手方向を「平(ひら)」、短手方向を「妻(つま)」と呼び、屋根と玄関との位置関係を表す言葉に「妻入り」と「平入り」という言葉があります。白川村五箇山の合掌造りは「切妻屋根」ですが、同じ「切妻屋根」でも白川村の合掌造りは「平入り」(長手方向に玄関がある)、五箇山の合掌造りは「妻入り」(短手方向に玄関がある)が多いのが特徴です。

掌造り 萱葺屋根の葺き替えをしているイラスト

茅葺き屋根は、経年劣化による定期的な葺き替えや修繕が必要です。白川郷では、20年から30年に一度大規模な葺き替えが行われ、五箇山では、屋根を6分割にして3,4年に一度葺き替えが行われています。集落には、共同の萱場があって、かつては集落の共同作業として茅葺屋根の葺き替えが行われていました。ちなみに、屋根の施工業者が茅葺の工事を行うと、1000万円から2000万円の費用が必要になりますが、集落の共同作業では、屋根の材料費も葺き替えの作業費も必要ありません。また、古い屋根材も堆肥として利用するので無駄がありません。

合掌造り 屋根裏(アマ)の格子床のイラスト

合掌造りの1階には囲炉裏が切られています。屋根裏(アマ)の床は一部が格子状になっていて、囲炉裏で温められた空気や煙が屋根裏に上がるような造りになっています。煙による防虫や屋根裏の乾燥、冬季の保温にも役立ち、養蚕を行っていました。囲炉裏を止めた茅葺の家屋は害虫が発生したり腐ったりします。

合掌造り 囲炉裏と焔硝 概略図

白川郷五箇山では、囲炉裏の周りの床下に穴を掘り、蚕の糞・乾草・人尿などを入れて、堆肥を作るような方法で焔硝(火薬の原料)を計画的に生産していました。五箇山では、16世紀後半にはすでに焔硝を生産していた記録が残っていて、その後、五箇山を支配した加賀藩は、徳川幕府との関係から幕藩体制が終わる19世紀中頃まで秘密裡で焔硝を生産していました。江戸時代の後期(19世紀)になり、外国船の来航や各地で戦乱が起きて焔硝の需要が高まると、白川郷でも煙硝の生産が始まりました。

 

この記事を書いた人

どもども

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